5月24日(金)に開催された、アジャイルジャパン2013 札幌サテライトに参加しました。
アジャイルジャパンのサテライトが札幌で行われるのは今年で3回目、私が参加するのも3回目です。
午前中は基調講演のサテライト、午後はアジャイル札幌によるワークショップ、という2本立てプログラムとなっていました。
“Demand Technical Excellence” アジャイルにおける技術と品質の重要性 – James Grenning 氏
組み込みの世界を中心に世界中で活躍しているJames Grenning氏。
「プランニングポーカー」の発明者であり、『アジャイルソフトウェア開発宣言』の著者の一人です。
英語のセッションでしたが、平鍋さんの通訳がわかりやすく、英語自体もゆっくり話をしてくれていたので、心にすっと入ってくるセッションでした。
当日心に残った言葉
- ソフトウェア開発の中心は「ドキュメント」と「プロセス」ではなく、「人」と「価値」
- 間違いを隠すことは「弱さ」
- バグを潰すのは”技術的卓越”ではない
- 品質を上げることではなく、バグを管理することが目的に変わる、それは品質向上スプリントではない
- 品質の向上にユニットテストは絶対に必要。クリティカル。かならず必要。TDDじゃなくても良いから必ずユニットテスト。(最も良いのはTDD)
- テストを自動化していないプロジェクトは1番最悪のタイミングで燃える
- 「テストを書く余裕 がない」ではなく「テストを書かないで(バグを放置して)おく余裕がない」という考えにシフトしてみよう
- モチベーションを下げるのは簡単 → 絶対にできない締切、事実を責める、品質の低い仕事をさせる、信頼関係がない、そういう仕事をさせればい
- 人は自分が知っていることの中での最善しか選べない。だから新しい知識を取り込まなければいけない
- モチベーションを下げるものを取り除けば、モチベーションは上がる。なぜなら、プログラミングとは本来楽しいものであり、プログラミングをしていれば、 ほっといてもあなた達のモチベーションは上がるから
「モチベーションを上げることではなく、下げないことを考える」というのは目から鱗でした。
「楽しく仕事をする」ためのアプローチとして、
・何かを追加する・新しいことに取り組む
のではなく
・楽しさを妨げる要因を取り除く
という視点はあまりなかったなあ。
一時期、どうにもモチベーションが上がらない時期があり、「自分はプログラミングの仕事が向いていないのではないか」と思ったのだけれど、別の場所でのプログラミングはやっぱり楽しかった、というのを思い出した。
あの時は、モチベーションを上げようとしていたけれど、モチベーションを下げるものがたくさんありすぎて、それを除外できていなかったんだな。
「柔軟心 (にゅうなんしん) と庭園デザインにおけるユーザーエクスペリエンス」- 枡野 俊明 氏
禅僧(建功寺の住職)であり、庭園デザイナーでもある、枡野氏。
お坊さんがアジャルジャパンで講演?と最初はピンとこなかったのですが(禅の心など精神的なお話中心かと思っていた)、庭園デザイナーとして、「ものづくりをする人」として、実践している事が自分たちとリンクする部分が大変多く、講演が終わった時には満足感でいっぱいになりました。
当日心に残った言葉
- 声に出して自らの気持ちを表現することは自分も気持ち良くなるし、相手も気持ち良くなる
- 相手にとって気持ち良いことをすれば、自分もいい気持ちになれる
- 「成さざるもの食うべからず」これは「働かざるもの食うべからず」と訳されることがあるが、もともとは他人に対していう言葉ではなくて、自分を甘やかさないための言葉
- クライアントの言葉に表れてこない部分、奥にある期待している部分をどう引き出すか
- 言葉に現れない部分に価値は必ず潜んでいる
- 求められているものが何かを納得するまで現場に通う
- 言われた要望だけを並べるのではなく、心を自由に
- 基本の拠り所は絶対に変えずに、良い方にどんどん変えて行く
- 予算は決まっているからそこの中でやりくりできるように努力する。
- 変えるときに、3手、5手先までを読んで組み立てる
- この人でなければできないもの、色、それはどんどんいれて行くとよい
- 極限まで削ぎ落とし、本当に必要な、手触りのよいものだけを残す
- 執着心があると他のやり方が見えなくなる、決めつけない
- 技術を「道に」する。道に終わりはなく、常に先がある。不完全の先には無限の可能性がある。完全を超えた不完全の美。
- 心を自由にするためには、毎日の生活に「余裕」を持つことが大事
「求められているものが何かを納得するまで現場に通う」と言い切った枡野さんが本当に格好良かった。
お客さんと直接話をして、言葉に表れてこない部分、奥にある期待している部分を引き出せるような仕事を自分もやっていきたい。
そして「日々の余裕を持つこと」について。
“職場を出たらロジックを考えない”であるとか、”空を見て季節を感じる”であるとか、そういう時間を意識的に取ることで、よりよいモノを作っていける(視野が狭くしない)というのは、仕事でも何度も体験したことがあるのによく忘れる。
忙しいと余計に忘れる。心に常に余裕を持ちたい。
「本当に必要な、手触りのよいものだけを持つ」という言葉は、自分の中で”こうありたい”と思っていることを形にしてもらえた!と思いました。
大事にしたい言葉です。
(今年のアジャイル宣言にはこの言葉を使わせてもらっています。)
「感じる×アジャイル」ワークショップ
午後から、アジャイル札幌としての「アジャイルジャパン」がスタート。
アジャイル札幌としてのテーマは【感じる×アジャイル】
- 手をを動かし、話し合いながら
- アジャイルな開発を体験し
- 新たな発見や現場をより良くするヒントを得よう
というのを目的に、「紙粘土で動物園を作るプロジェクトを体験しよう」というワークショップです。
顧客側、開発側両方の体験ができるのですが、私は開発の時間「顧客代表」として、顧客側の立場を体験しました。
顧客として次のような「気付き」がありました。
- 開発者が自分たちが想像している以上の成果物をリリースしてくれたことで、あれもこれもやって欲しくなった
- 「きっと期待どおりのものを作ってくれる」という信頼が生まれたタイミング
- 近くで作業していると何をやっているか見たくなる
- 近くで見積もりしていると、ゴールの相違に気がついて訂正したくなる
最終的には期待以上の動物園をリリースしてもらい、「欲しいものができた」という顧客の気持ちになることができました。
(水浴びをする象)
今回のワークショップを現場に照らし合わせてみた時に
- こんなに距離が近い場面はそうそうないけど、どれくらいうまくいくのだろう
- いつも開発者が期待以上のものをリリースできるわけではないよな
- 期待に答えられなかった時の信頼関係はどうなるんだろう
という、「現実世界でどうしようか」という問題も浮き彫りになった感じがします。
ここもちゃんと持ち帰って取り組まないとなあ。
1日を振り返って
アジャイル札幌代表の鈴木さんがクロージングで
「こういう風にアジャイルについてみんなで考える日が1年に1回あってもいいんじゃないか」
と言っていたけれど、私にとってのアジャイルジャパン札幌サテライトはそれだけじゃなく、
「1年に1回、自分の働き方を見つめなおす場」
にもなりつつあります。
最初のサテライトが転職して最初の年だったり、今年のサテライトは自分の働く環境が変わる直前だったりと、偶然にも、仕事について改めて考えてみるには調度良いタイミングばかりだったのもある。
「新しいことへのワクワク感」「現状を打破するためのヒント」「現場を楽しくしたい」と今までも色々な考え方や目標を設定して帰っていたのだけど、今年は
「これからどうなりたいか、そのためにどうしたいか」について考える時間になりました。
来年の自分はどういう気持ちでこの場所にいるんだろう。
良い講演と良いワークショップができた(懇親会も!)充実した一日でした。
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